空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

村上隆が教えてくれた大切なこと

「村上隆」という名を知っている人はそれなりにいらっしゃると思います。

 ■村上隆 - Wikipedia

しかし、オタク界隈やネット界隈では、あまり村上隆氏に対して良い評価を聞きません。それは作品自体はありふれているように見えるわりに海外の評価が異常に高いこと。また、『ギャラリー・フェイク』でも彼のことを指しているようなエピソードで指摘されていますが、オタク文化の上澄みだけを盗んでの創作しているという点も言われます。正直、私も写真でしか見たことありませんが、私も彼の作品には魅力を感じません。

しかし、最近思うのですが、ここで村上隆氏を全否定は出来ないのではないかと思うのです。そして全否定してそこで終わってしまっては、何かを見逃すのではないかということも。それは「(主に海外に対して)アピールする」という面において。

前述の『ギャラリー・フェイク』では、その村上隆氏がモデルとなっているような人物に、「日本のオタク文化に詳しくない外国人が、これらの作品の引用的要素をオリジナリティと勘違いして高く評価するのは当たり前」とフジタは語っています。私もだいたい似たような意見です。しかしこれ、言い換えれば、「外国人は日本のオタク文化を知らない」という面と「故に(引用的なのに)目に見えるその作品を(オリジナルとして)評価している」というようにも言えます。つまり、以下のようにも言えるのではないでしょうか。

  • 外国人は日本のオタク文化(の要素)を高く評価している。
  • 外国人は日本のオタク文化をほとんど知らない(知らなかった)。
  • 目に見える物(村上氏の作品)は評価されている。

これをふまえると、日本のオタク文化というのは、外国人に対して高い評価を受ける土壌があるということです。小さいかもしれませんが、全くないとは言えないでしょう。しかし、それまではほとんど知られることがありませんでした。だけど、それをアピールしたのが、村上隆氏、とも言えるわけです。今までは評価が疑われていた市場は、かなり高い評価を得られる市場だと判明したわけです。ということは、それを発見した功績、そしてそこでアピールをしたということ自体は評価出来るのではないでしょうか。もちろん、これは村上氏の功績ではなく、それに絡んだ人(仲介業者等)の功績と言う人もいるでしょう。しかし、それならばその要素、つまりアピールする手段があれば、日本の作品は海外でも通じるということをその作品を通じて教えてくれたのですから。つまり村上氏より上だと日本のオタクが思っている作品を海外にアピールすることが出来れば、そこで評価されることはあり得ると判明したわけですよね。ならば後に続けばいいだけです。

さすがにオークションで高値がつくということはあまりないでしょうが、少なくとも日本と同じように販売して、受け入れてくれる人がそれなりに存在するという証明にはなったでしょう。つまり、村上氏の作品ではなく、村上氏(もしくはその周辺を加えてのチーム村上)の行動については十分評価してもよい気がします。ただ、この動きはコアな海外オタクや出版社など、他の動きでも海外に広まる動きはありますから、村上氏だけの功績ではないとは思いますが。

あと、こういったものを海外に評価させておけば、今日本でその動きがある数々の表現規制にちょっとした歯止めがかかる可能性もあります。つまり海外では認められているのに、何故日本ではいけないのかという盾になると。少なくとも裸体の少年が股間から液体出しているのはいいのに、何で半裸でポーズをとっているアニメのフィギュアはダメなのかというひとつの論にはなるかも。


そういうわけで「あの作品レベルで海外に評価されるのは嫌だ」と言うのだったら、それをアピールする手段を身につければいいのではないかと。現物はすでに大量にあるのですから。つまりオタクが英語を学び、村上隆作品以上のものを海外に紹介すれば、そういったものが評価され、村上氏を超えることは出来るのではないかと。それはもちろん制作者でなくてもかまいません。ユーザーが発信者となり、そういったものを紹介すればよいと。幸い今はネットというものがあるのですから、たとえば英語でそういったオタクの情報を積極的に発信するとか(そういう動きも一部であるようで)。ニコニコ動画の海外の反応シリーズとか見ていると、おそらく海外でもこういった需要、かなりあると思うのですけどね(自分もやってみたいけど、今は英語力もないし時間的余裕もないので)。

■参考:Akibanana


英語やその他外国語を学ぶというのは別にその国に合わせるという敗北ではなく、日本語圏内でとどまっている多くのものを、武器に変える強力なツールと言えるのですから、それを手に入れてみるのもよいのではないでしょうかと最近思ったりしています。さもHTMLだけでは足りずにPHPを覚えて表現の幅が広がるようなもの……って、言語とプログラム言語の例えが逆な気がするけどまあいいか。