空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

Leaf・Keyのゲームがインターネット上で盛り上がりを見せた奇跡的な時代

私もパソ通をやっていた人たちから比べれば、インターネット歴は浅いと思っていましたが、いつのまにか始めてから10年以上が過ぎ、ネット歴が長い人間のほうに入ってしまったかもしれません。

私がネットを始めたのは1990年代後半、Windows95にインターネットへの対応がそれなりに備わったあたりです。まだ、ADSLなんてものは存在せず、接続は56Kのダイアルアップモデムを使って、11時からのテレホーダイを狙ってかける。だけど家庭内で分岐していないと電話がかかってきた瞬間に切断するので、ダウンロードが途中で終了してシオシオな気分になる。そしてISDNへのチェンジを検討するといった時代です。さて、この当時ネットを使い始めたのは、もちろんいろいろなホームページを見たり、メールをしたかったから(エロ見たいからじゃないって、いやマジで)。そしてそういうところを回っていると、だんだんと見るところの幅が広がってゆき、掲示板やらチャットやらに参加するようになりました。

そして、ややネットに慣れ親しんだ1999年〜2000年あたり、当時ネットではあるゲームの話題が話題となっていました。それは「ToHeart」「ONE」「Kanon」といった、パソコンのエロゲーもの。たしかに今でもゲームで盛り上がることはありますが、その当時のこれらの勢いは相当なものでした。今でも「2ちゃんの○○板内」とか、「ニコニコ動画内」とか限定的に盛り上がっているものはありますが、そういったひとつのコンテンツではなく、まるでネット全体を覆い尽くさんばかりに。


たとえば、これらのファンサイトが大量に生まれたのはもちろん、二次創作が数々発表されました。そしてそれにまつわるツールも出ましたし(DNML、BM98など)、SSのまとめサイトなんてのもありました。それどころか、各登場キャラごとのファンサイトまで生まれることも全然珍しくはありませんでした(有名なのは『わっふる同盟』とかの各種同盟かな? つか、現存してたし)。

また、それはその作品を語る以外の部分でも度々姿を現しました。たとえばツールでもそうです。『謎じゃむ』『詩子さん』なんてツールがありましたが、これらはその作品に登場するものから名付けられたもの。あと、古参のサイトさんにはもともとそれに関係する名前、もしくは旧名がそうだったというところも数多くあります(例・神聖マルチ王国さん)。それに『悪徳商法マニアックス』さんの下の方にもまだ残ってますが、マルチ商法撲滅のバナーにキャラクターの「マルチ」が使われたり、AAが掲示板に貼られたりとかもありましたね。故に、この当時からネットをやっている人は、直接的にはそのゲームに触れていない人でも、何らかの形でキャラを見たとか触れた、知った可能性があると思います。



さて、何故これだけの盛り上がりを見せたのか。たしかにゲーム自身がエロ中心から感動や萌え中心へと移行した変革期で、ユーザーの多くに衝撃を与えたからというのもあるでしょう。しかしそれと同時に、当時のインターネットとこれらの作品が、これ以上ないほどにうまく噛み合ったことも、今思えばあるのではないかと。

この当時のインターネットって、広まりを見せていたとはいえ、本当にまだまだ一部の人間のものだったのですよね。しかし、パソコンゲームのユーザーは必然的にそのインターネットに入りやすい環境にあります。つまりこの時点でそういったパソゲーユーザーは比較的多数派であり、よってまだまだ狭かったインターネットの世界も、そういったものに染まりやすかったのではないでしょうか。且つ、当時のインターネットはどことなくアンダーグラウンドな部分もあり、そういった会話も全然ある意味、隠れてするものだったエロゲーが、このインターネットにおいてそれまでよりも広いコミュニティを得たのかもしれません。

これは意図的だったというよりは、時代の偶然といった方がいいでしょう。ただ、その偶然が、そういったゲームでネット中が盛り上がるという文化を生み出したと。そういえば『新世紀エヴァンゲリオン』の話題もたしかに盛り上がっていましたが、微妙に時期がずれたかなという感じ(それでもかなりコンテンツはありましたが)。もしエヴァの本放送があと3年遅かったら、これらゲームと並ぶくらいにこの話題でネット中が席巻されていた可能性はありますね。



ただ、21世紀に入ると、たしかに盛り上がっていたゲームはありましたが、ネットの世界全体が広くなっていたために、前ほどはネットを席巻していたとも言えなかった感じはあります。それは一般の人も多く入り込んできたのと、オタク系の人でも多様な趣味が入り込んできたために、パソゲーユーザーが多数派ではなくなってきたというのもあるでしょう。おそらく、今後どんなゲームが出てきて、大きく盛り上がったとしても、全体を巻き込むような当時の再現は難しいでしょうね。そうなるとますますあの時代は奇跡的だったのかなとも思えます。*1
でも、あそこまでではなくても、ひとつの作品であれだけ盛り上がれる時代ってのがまた来るのだったら、それは楽しそうですね。

*1:ただ、もしかしたら盛り上がっている絶対数は、範囲は狭くても今の方が多いのかもしれませんが。