空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

同人作家さんへ感想を送ることの可否についてちょっと考えてみた

まず、前置きとして、今日の文章はあくまで私が思うことです。一応多くの人にあてはまりそうなことを書くつもりですが、この件で考えていること、思っていることは、人によって正反対のこともありますから、あくまでこう思っている人もいる、ということで受け取っていただければ幸いです。

このようなエントリーがありました。
d.hatena.ne.jp
同人作家さんに感想を送っていいのか、というもの。いきなり結論から言うと、むしろ出すべきだと思います。だって、創作者となったのは、その作品を表現したいという他に、それを読んでの感想が知りたいというのは不自然でも何でもないことですから。そしてこれは商業作品でも同じだと思います。少なくとも、純粋に感想を送って迷惑になることはないと思います。まあ同人の場合、家庭の事情(同人隠し)がある場合も存在するので、感想送付用住所が書いてない場合は、メールなどにしたほうが無難かもしれません。

ただ、同人の感想に限ったことではありませんが、2つのことだけを守る必要はあるのではないかと。それは『迷惑をかけない』、そして『見返りを期待しない』ということ。
f:id:nakakzs:20171016151023p:plain


『迷惑をかけない』は、別にその作品の気に入らなかった点などを全く書くな、というわけではありません(マナーに従った上で)。例えばこういうものが迷惑だと思います。

「らき☆すた」声優ブログ無期限休止 コメントの指摘にショック受けた? : J-CASTニュース

他のファンの大多数がちゃんと怒っているあたり、普通の感性の持ち主の方が多いとわかりますが。そのほか、ストーリーマンガなら展開を強制するとかいうのもありますね(願望ならともかく)。

あと『見返りを期待しない』というのは、上の迷惑行為にもやや重なるところがありますが、自分が感想を出したからといって、その返しを期待しないというもの。作家さんというのは、プロにせよ同人にせよ作品制作に時間を注ぐ分、時間的余裕がない人が多いです。しかし文章を書いたことのある人はわかるでしょうが、それが人に届けるべき文章となるためには、比較的作成に時間がかかることが多いです。メールの文章もひとつ送るのに、30分から1時間かかったという人も珍しくはないのではないかと(特に失礼のないようにする相手の場合は特に。だから仕事のメールって意外と時間を食うので、メッセンジャーの方が早いことも)。

ただ、読み手としてはそこまで手間をかけてわざわざ送ってくれたものなので、ありがたくないはずはないです。しかし反面、自分が返事を返すのは、時間的に無理な場合が多いのですね。故に「返事は出せないけど読んでいる」というのは、ほとんどの場合本当だと思います。*1故に、返事が来ないからといって別に嫌われたと思ってへこむことはありません。本当に制作の時間分、返事をする時間が無いというケースが多いので(うちのブログの場合のコメントレスも同じく。本当にすみませんです。ちゃんとメールでコメント届きますし、読んでいるので)。

ただ、同人の裏話としても、昔から漫画家の楽屋ネタとしても、困ったファンレターの話が語られることがあります。それによると、「切手と返信用封筒が同封された」「売り切れた同人誌がほしいとお金を同封してあった」、はては「(コミケ前に)泊めて欲しいと書いてあった」等々。あと、感想を一回返しただけなのに、「俺は○○さんとマブダチ(死語)」みたいに語って、想像以上に馴れ馴れしく接してきたり、本を無料でもらおうとする人も希にいるとか(今はあまりいないでしょうが、昔は頼んでないのにBBSの主みたいな存在がいたような)。つまり、感想がメインではなく、このような見返りを期待してのものというのが混じることがあるようなのです。

私個人としては幸いこのような目にあったことはないのですが、大昔、コンシューマのゲーム会社でバイトをしていたときにこんな話を聞いたことがあります。とあるソフトの感想が送られてきたのですが、それが銀行に置いてあるような封筒。しかも中を開けると広告のチラシの裏にびっちりと文字が。それにはゲームのアイディアが書いてあり(言うまでもないけど当然使えないもの)、「続編ではこれを使え。金はいらないけどスタッフロールに名前は載せろ」と書いてあったと。全部で5〜6通届いたそうです。ネタのようですが、手紙の実物を見せてもらったので嘘ではないでしょう(精巧に作られた騙しアイテムでない限り)。

つまり、感想が来るのを躊躇する人というのは、ほとんどの場合感想自体が嫌なのではなくて、このように少数潜んでいる、迷惑なものを恐れているのではないでしょうか。ごく一部で有名な肉般若ではないですが、そういう怖いことに遭遇したくない気持ちは当然でしょうし。

■参考:肉般若


故に、同人にせよ商業にせよ、感想を出すのをためらっている人は、自分の文章で作者を傷つけてしまうかもしれないという思いのほかに、そういう作家側の空気を読み取って、「自分も迷惑をかけるのでは」と思っている人は感想を送るのを躊躇してしまうと(ただ、そう思っている人はほぼ100%迷惑と思われることはないでしょうが)。

ただ、それだからといって送らないのはもったいないと思うのですよね。ですので、上のルールさえ守れば、送った方がよいのではないかと。もちろんこれはケースバイケースですので、送り方は最初に述べたようにちょっと考えてもよいでしょう。

逆に言えば、感想が欲しいのに来ないと悩んでいる同人作家さんは、作品の後書きにでも「感想募集中です」とアピールしてはいかがかと思うのです。そうすれば読み手も、「ああ、出していいんだ」と思いますし。「もしかして感想をねだるなんておこがましいんじゃ……」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことを思う人は滅多にいません(まあそういう少数の人が声が大きかったりする場合があるのですが)。してほしいけと相手を気遣うことによりお互いが止めてしまっているお見合い状態はもったいないですからね。

*1:そのためにプロでは、返事は返せないけど年賀状は送ってくれる人もいます。昔、アフタヌーンのアンケートに感想を書いただけなのに、某『J』のT先生から年賀状が届いたのには感激しました。今は個人情報保護法があるので無理っぽいですが。