「弱きもの」が勇気を振り絞って反撃する場面が美しい

『鋼の錬金術師』最新刊の20巻を読みました。

問答無用でおもしろい。しかし、ここまで長くなっても話の中だるみを起こさずに読み続けられる長編マンガはかなりすごいものですよね(部分的におもしろいものがあっても、20巻くらい続くと弛んでくるものが多いので)。そして複数のサイトで感想があがっています。

鋼の錬金術師 20巻 この世のすべてが欲しい!

さて、今回も見所がたくさんあるのですが、私も上のサイトさんのように特にドクター・マルコーの反撃が印象に残っています。ここでは今まで大きな力に流され、数々の人を犠牲にしながらも賢者の石を作り出し、平穏な生活を手に入れてからも村の人を人質に取られ、ホムンクルス側に従ってきた彼が、スカーと同行して、はじめて反撃に転じます。今まで知識や背景の解説役としていて、戦闘には全く役に立っていなかった彼が、今回、はじめて反撃に転じるのが例のシーン。ここには一度は状況に押しつぶされ、死を選ぼうとしたところから、贖罪のために前に進む強さも現れており、一段と読むものを引きつけます。

このような「弱きものの反撃」というのは、昔から少年マンガにはよくありますよね(正確には「弱いと見なされている者」かな)。例えばジョジョの第一部、助けられてついてくるだけの役だった弱虫のポポが、姉のピンチに『いつかって、今さ!!』と言いつつ、勇気を振り絞って助けるシーン。この台詞も濃いキャラの名台詞が多いジョジョの中で、存在感のあるものの一つになっています。あと、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』で、口先だけのポップが落ちぶれたエセ魔法使い老人に促されて、はじめて勇気を振り絞り無謀な戦いの場に赴いて、ダイを助けるシーンに心を打たれた人は多いと思います。また、戦いではなくてもキャプテン翼のくそったれ捨て身ヘディングなども、昔からのキャラながらすっかりユース時代には控えキャラになった石崎君の見せ場として、読者に強いインパクトを与えました。

「弱きものの反撃」というのは、読み手に強い印象を与えるのですよね。それはもしかすると、読者は圧倒的な力を持つ主人公達に対してのあこがれや感情移入をしますが、もう1人の読み手に近い存在がその圧倒的な力の前に何もすることが出来ない(出来なかった)「弱きもの」だからかもしれません。『北斗の拳』も、ある意味読者に一番近かったのは、バットかもしれませんね。

この「弱きものの反撃」で、私が一番印象に残っているのが、『ヘルシング』のペンウッド卿。このキャラ、最初からダメ要因として位置づけされていて、読者でさえも「ギャク担当」と思っていたでしょう。しかし、実際に戦闘が始まった瞬間、この人の印象ががらりと変わります。

最初、内部に裏切りが生じたときも、この人「私は無能かもしれんが、卑怯者ではないよ」と、裏切りを否定。そして襲撃されたとき、彼の真価が見えます。それは自分の無能をわかっていながら、「自分の仕事だけは全うしなくてはいけない」と、震えながら逃げることを拒否します(正直、ここまでインテグラさえもこの人のことを甘く見ていた感じがあるのがまたおもしろい)。

少年画報社『ヘルシング』平野耕太・第5巻193ぺージ

それにインテグラは強い意志を持ち、そしてそこの係員全員が奮い立ち、吸血鬼の恐怖を感じながらも自分の仕事を全うする姿が美しい。

しかし本部は陥落します。しかしここで彼の最期の見せ場。今まで周りに流され、数々の無茶な要求を受け入れる立場だったペンウッド卿、インテグラにもそうされた思い出を回想しながら、最後の公式放送『抵抗し義務を果たせ』を発信。

少年画報社『ヘルシング』平野耕太・第6巻26ぺージ

その後吸血鬼に押し入られるも、爆弾をしかけ、自爆の道連れにします「やめろ」との吸血鬼の言葉に、「嫌だ!! そんな頼み事は聞けないね!!」と返答し、自爆ボタンを押す彼のかっこよさは、主役クラスのアーカードやセラス、ベルナドットにも負けないくらいのものでした。ちなみに彼の死にその後友人であるアイランズ卿などが怒り、「彼は無能だ、だが男の中の男だ」と評しているあたり、仲間うちではその真価を昔からわかっていたあたりも印象的です。

このように、強い者が力をふるう影で、弱い者がその少ない勇気を振り絞り、反撃するのもまた、深い感動を与えます。まあ、けっこうこの場合の展開として、失敗して死んだりもするのですけど、その意志が誰か(たとえば弱体化している主人公)に与えて、意志が引き継がれることも多く、無駄には終わらなかったりします。

さて、今のマンガだと、またこの反撃を見せそうな弱キャラとかいるかな?

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