空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

DocomoのピンチはiPhoneを獲得できなかったことではなく、もっと別の場所にある

最近、DocomoがiPhoneを獲得できなかったから、これからのシェア争いでピンチになる、と予想している人がいます。しかし、私個人では、あまりそれ自体はピンチだと思っていません。というのは、iPhoneに市場を大きく変える力は、いまのところ、という条件がつきますが、それほどないと思っているからです。ちなみに関連する記事をちょっと前にGMブログのほうで書いたので、よろしければそちらも。

■参考:iPhoneが誕生してもゲーム業界の常識はそんなに変わらない | ゲームミュージックなブログ

しかし、そんなiPhoneとは関係ないところで、もっとDocomoにはピンチな要素があると思うのです。他によく言われている他キャリアの攻勢もそうでしょう。しかしそれよりも、内部的な戦略のずれが最近非常に気になるのです。


まずひとつはこれ。

「ドコモにはプラダフォンがある」──山田新社長、iPhone販売は「あきらめていない」 - ITmedia ニュース

私が重要だと思うのは、もちろんこっちは同じことを思っている人が多そうなので割愛しますが、とりあえず一つ言っておきたいのは、ブランドってのはつけるものの性質とあっていて、はじめて価値を発揮するものだと思うってこと。シャネルのUSBハブとか、ルイ・ヴィトンのマウスパッドなんてのがあったって、高額を出してまでほしいと思う人はごく少数でしょうし。そしてユーザーの心理的には、Docomoは機能などよりもそっちを重視しているのか、つまり機能に手をかけなくなるのではと思ってしまいます。となると、私のようなブランド的な価値は全くいらない人は、選択肢から外すようになってしまうのではないかと。

そして、もっとまずいと思っているのがこちら。

ドコモ、6月から公式サイトの表示順位を入札で販売へ - ガベージニュース(旧:過去ログ版)

これは、マイメニューの一部において、掲載順を今までのような人気順ではなく、広告の量によって掲載順位を動かすというもの。まあ色々目的はあるようですが、普通に考えれば一番は広告収入の増加を期待していると読むのが自然でしょう。しかし、この方法はどれだけあるかわかりませんが、広告収入と引き替えに、重要なものを失うことになるのです。それは、ここのメニューだけではなく、全ランキングの信用。ひいてはマイメニューへの信用。

広告により操作するということは、イコール必ずしも面白さで反映されないということになります。ということは、その順位はランキングとしてはあてにならない、ということも同時に言えるようになります。たしかにリンク先で書いてあるように、広告対象にする部分は影響の少ない微々たるところかもしれません。しかし、これはたとえ少しでも、やること自体に問題があるのです。それは、ランキングが金で動くという前例を作ってしまうから。これはどのランキングでも同じことですね。そのランキングが金で動くと広まれば、一気に信頼性は失われます。マイメニューの場合も、今は一部だけですが、そのうち全部に渡って広告によ順位操作が行われる=ランキングが面白さを示すものとしてあてにならなくなるという心理が働き、ランキングとしての機能を殺してしまうのではないかと。

おそらくこれ、Googleを連想しての戦略でしょうが、Googleの場合もたしかに広告を出している企業が上の方にくるようなことを言われます。しかしそれは絶対ではなく、一応は一番ニーズにあいそうなところが上にくるようになっています(それをしても広告が集まるように、一番上や横に広告エリアがあるのでしょうし)。まあ、上5つを見れば、それなりのものは得られるでしょう。

しかし今、Docomoがやろうとしているのは、Googleというよりは、どちらかというとJWordに近い気がするのですよね。

JWord - Wikipedia

ネットではJWordは昔から様々な問題が言われていますが、そのうちのひとつとして、検索結果があまりにも広告に寄りすぎている、ということが言われています(上リンク先「JWordの検索結果」参照)。その結果、検索エンジンとしてはJWordは信頼性がないと多くの人に思われるようになり、メジャーにならなかったのではないかと。

そして今、Docomoはマイメニューで似たような路を辿ろうとしているのではないでしょうか。


なんというか最近のDocomoって、iPhoneという、どのくらいの規模かわからない軍隊に対して恐怖して、妙な戦略を立てているように思えるのですよね。まるで鳥の飛び立つ音に驚いて、戦わずに逃げた富士川の合戦の平家みたいな感じ。10年使ってきたユーザーとしては、もっと頑張って欲しいのですけどね。とはいえ、長年契約のメリットは最近の契約方式でどんどん薄くなってきましたので、やはり総合的に見て便利なところに移行する可能性はあります。お気に入りのパナソニック携帯はどこのキャリアにもあるし、サブにウィルコム持つ可能性もあるし。

今は下がってきたといってもDocomoが約半分のシェアを持っていますが、下がってくるかもしれません。はたまたソフトバンクのように何か革新的なことがあっていきなり転換するかもしれません。そのへんに注目してゆきたいと思います。