空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

パロディに頼りすぎない良質なパロディ多用マンガ『ふおんコネクト!』

『まんがタイムきらら』で連載されている『ふおんコネクト』の2巻が発売されました。
さて、このマンガ、まんがタイムきららで連載されているもので、かなり独特な存在感があります。一番目立つのはさまざまなもののパロディでしょうね。

 

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ざら『ふおんコネクト!』(芳文社)2008年6月号3ページより


最近パロディを使ったマンガは多いですが、個人的にはパロディは諸刃の剣だと思っています。というのは、親近感的な笑いが起こせる反面、知らない人には全く通用しないからです。そういう人をおいてけぼりにする危険性があります。ですので、パロディには一世代前の、誰でも知っているようなマンガのものが多いのですよね。故に『ドラゴンボール』『キン肉マン』『ジョジョ』といったものがパロディになりやすいと。あと、外したときの寒さが半端ではないこと。特に多いのが時期ズレですね。芸能ネタは引っかかりやすいと。そういえば昔「チョベリバ緋牡丹お嬢さま」という、当時の流行語?をタイトルに冠したマンガがありましたが、連載終了時に受けた印象はまあ……(まあ、時期がずれたのをネタにしてしまう人もいますが。

一番の問題は、パロディネタに頼ってしまい、パロディ以外のそのマンガの話自体が面白くなくなる場合が多々あることです。というか、要素の一部をパロディに費やしてしまう分、本編が削られるのですよね。その結果暴走してしまう作品も見受けられます。まあ全編パロディにしてしまえばそれはそれで面白いのですが、それを連載で毎回やるのは無理がありますよね(まあ、単行本のおまけとか1話だけそんなのとかはありますし、それはいいと思います)。そのへんをクリアして、パロディがなくても面白いと思える部分があるからこそ、『ハヤテのごとく!』や『さよなら絶望先生』、少し前なら『神聖モテモテ王国』は良いと思えるわけですね。


で、この『ふおんコネクト!』も、パロディは多めなのですが、作品の根本がしっかりとしたものとなっているので、面白さの本質を損なっていません。

 

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ざら『ふおんコネクト!』2巻(芳文社)83ページより

もちろんパロディも昔のネタから最近のニコニコ系ネタまでさまざまなものがあるのですけど、別にわからないても読み進められる位置にあって(ちょっとは気になるかもしれなしけど)、ストーリーを邪魔していないと。最初の画像もあくまで携帯電話通話中を示す3コマ目ですからね。それに「ゆっくりしていってね」がトッピングされた感じ。上のも別に『シスタープリンセス』がわからなくても読み進められますよね。


さて、一応設定は学園もので、お騒がせの主人公と3姉妹たちが織りなす学園ギャグ……といえば普通に聞こえるのですが、このキャラクターがかなり個性的です。主人公のふおんは超銅鑼ブルメーカーで超広範囲のオタク、行動力抜群のトラブルメーカー。長女夕は英語教師、破天荒、超オタクで造形がプロ級、米軍に知り合いがいて、とんでもないことにつきあわせる。次女交流は完璧超人で株で何億もの資産持ち、且つ学園の筆頭理事。三女道果は交流に百合的あこがれを持つ普通の少女ってな感じ(故に振り回され役)。ちなみにキャラの名前が、全員IT系のものに由来しているのも特徴。例:境ふおん→ボーダフォン、英夕→au、三日科交流→NTTコミュニケーションズ、道果→ツーカー。

騒動も半端ではなく、ぎりぎり現実感を保ちながら(たまに]オーバーするけど)、暴走しています。

 

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ざら『ふおんコネクト!』(芳文社)2008年6月号8ページより


2巻では、学園内の生徒会選挙を巡る、実際の選挙のような集票活動が面白かったです。基本ギャグですが、いい話系のこともわりとあったりします(特に次女交流の変化)。ストーリー的にもけっこういいです。

あと、見てわかるように萌え系4コマ漫画の一般的な絵柄とは微妙に異なって、かなり線が細かい緻密な絵柄なのですよね。ようメカものが出てくるのですが、その描き込みには感心させられます(単行本のカバー裏も、聖衣パロですが、かなり細かい)。

そんなわけで、パロディの元ネタがわかる人もあまりわからない人も、楽しんで読み進められるマンガだと思います。ただ、人間関係がわりと複雑なので、1巻から読んだ方がいいかも。

あと、きららWebで外伝的な「みちかアクセス」が見られるので、そっちも読んでみてはいかがでしょうか。

まんがタイムきららWeb