空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

ニュースサイトは古本屋さんです?

少し前ですが、まなめさんのエントリーです。

ニュースサイトは本屋さんです

読んでああ納得、とニュースサイトを運営していない自分でも思わされます。
しかし、「ニュースサイト」というものに対して、私は前々から思っていたことが別にありました。それは、ニュースサイトの仕組みが「古本屋」に似ているということ。しかしそれは、扱うソースが二次ソースだから(古いソースだから)という意味ではありません。実際一次ソースを扱っていたり、本来ならニュースたり得ない情報を紹介する(1.5次ソースともいうべき)ニュースサイトさんもありますしね。従って、タイトルの「古」本屋という文字で、何事かと思っていらっしゃった方もいるとは思いますが、別にマイナスの意味ではありませんので(あと釣りでもないです)。

では、何故「ニュースサイトは古本屋」なのでしょうか。


その前に、私のつまらん昔話を。私は学生時代、神保町のとある本屋で年三回、その本屋が忙しくなる時期に臨時のバイトに入っていました。*14年やってましたから、2週間×10数回やっていたことになります。ま、倉庫から埃にまみれた本を出してくるので、肉体労働でしたけどね。でも、お茶とか出してくれたし、時給もそこそこでいい経験になりました。

それはさておき、その時に聞いた話なのですが、古本屋というのは個人から仕入れる(売りに来るも含む)、組合の交換会などで仕入れる他に、他の本屋から買うという場合も存在するのですね。まずこんなこと、新刊本屋ではありません。これはどういうことか。

古本屋といっても、すべてが総合的な分野を扱っているとは限りません。特に神保町では「○○に強い」「○○専門」というところが多くあります。例えば人文科学系>宗教系>仏教系>○○宗系みたいな感じ。すると、下流過程の方は大きい書店にそういったものがあると、手に入れて揃えたいわけですよね。何故か。それは下流過程の方は、確実にそれを目的として買いに来ている客が多いから、それだけ売れやすいためです。人文科学系の本屋には、たくさんの人が来ますが、その本を求めている人が来るとは限りません。しかし、○○専門という場合、そのジャンルだけ対象となるので、全体的に来る客は少ないですが、その分売れる可能性は高まっていると思います。その本が探される可能性が高いのですから(御用聞きみたいに「この本探してくれ」と頼まれている場合もある。当然その場合は購入価格に上乗せして、客のもとに行きますね)。余談ですが、各地の古書店組合では、そんなことをする以前に、自分の所では扱わない、もしくは重複している本を出して、代わりに扱う本をとってくる「交換会」なるものが存在するようです(実際に、業者の人しか入れないそれには行ったことはないですが、そういう名目で何故か一般の人も入れるところには行ったことがあります。でもそれ、ただの古本市だよなあ……)。*2


さて、これと同じことがニュースサイトにも言えるのではないでしょうか。つまり、大手のニュースサイトさんが総合的なものを扱っている、上で言えば人文科学系の書店だとしましょう(もっともここでもそれなりにジャンルが固定されている場合もありますが。マンガとかゲームとか、ネット系とか)。そして孫ニュースサイトさんは、そういったニュースサイトさんから情報をとってきます。それと同時に、自力でもニュースを集めますね。それはまるで自分のところで売る本を集めて回るように。さらに曾孫ニュースサイトさんは、その上からニュースをとってきますね。それと同時に自分でもニュースをかき集めます。

この、「素材を集める」という点において、ニュースサイトさんと古書店の仕組みがなんとなく似ていると思ったのです。つまり、大きな古本屋(ニュースサイト)から、自分のところで扱う本(ニュース)をとってきて、それを並べるという感じ。もっとも、本は金銭が絡む点、ニュースは本と違っていくらでも複製できる点が異なりますが(ちなみに一次ソースのIT Mediaとかは、一般書店か、はたまた古書組合の交換会か)、


さて、これに照らし合わせると、古本屋が売れるようにするための方法というのも、ニュースサイトにアクセスを増やすための方法も似ているのではと思えます。

古本屋は、何故、専門書店になる等、独自の色をつけるのでしょうか。それは趣味、というだけではなく、そうすることで、「差別化」を図れるとからだと思います。小さな書店が、ただの大きな書店の縮小版ならば、そこに行く必要性は薄れます。まあ本屋の場合、それでも大きい本屋にない本が、小さいところに存在することもあるので、客の周りは悪くないでしょうし、古本屋が全くないところでは、そこに集中して集まるという土地の利があるので、その限りではないですが。しかし、ニュースサイトの場合、土地の違いはなく、全部ネットという場所に存在します。となると、大手で紹介されたものと同じ配列で同じものしか置いていないところには、客としては行く必要は薄れるのではないでしょうか。しかし逆に言えば、「ニュースサイトに行く理由」が大手と重複せず、ひとつでもあれば、そのサイトに来訪する人は増えるのではないかと思えるのです。

その方法のひとつが、本屋と同じ「扱う素材の個性」をまとめること。つまり、少年漫画なら少年漫画、初音ミクなら初音ミクを中心にまとめるという感じ。まあ需要の多いジャンルはそれだけ興味を持つ人も多いですが、反面、競争も激しそうですね。あと、流行廃りもありますし。
それに、別に情報の個性化だけではなく、何らかの「この場所でないとないもの」があればいいのではないでしょうか。例えばまなめはうすさんみたいに「1年前のニュース」とか。最近、DONTAKTさんがよく話題になりますが、「マイナーなサイトをとりあげる」という方針は、実は経営戦略上当たっているのではないでしょうか。それは、競争相手が誰もいない市場なので、そこを目的とする層が全て集まるから。行ってみればそこは、ニュースサイト上のブルーオーシャンだったのかも(もちろん切り開くのはかなり大変だと思いますが)。


とはいっても、ただ、好きなことを楽しくやるのが、品質的にも持続力的にもいいのではないでしょうか。でないと、何よりも大切な「持続」という点において続かないような気がしますから(ニュースサイトではないですが、私もゲームミュージックだったから、ゲームミュージックなブログが2年以上続いているのだと思います)。金(生活)のかかっている本屋と違って、サイト運営は趣味なのだし、自分の納得する形が一番いいのではないかと。


そんなわけで、今日はニュースサイトをやっているわけでもない人間が、偉そうにニュースサイト論を書いてみました。でも、こういうのって何の実績が無い人間が言っても説得力がないよなあ……。まあ、ニュースサイトを運営している方は鼻で笑ってくだされ。

*1:別に変なところじゃなくて、昔ながらの古本屋さんですので念のため

*2:古本屋をやっている人からは微妙に違うと思われるでしょうが、大目に見てね。ツッコミは私も知りたいので可