空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

ジンバブエで起きてるハイパーインフレについてのメモ

非常に興味深いニュースが。

■100ドルで札束20キロ ジンバブエ通貨の下落止まらず ※リンク切れ

世界史の教科書で、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間のドイツを学ぶと、荷車で札束を運んでいる写真を見たことがある方も多いと思われます。下のリンク先で載っている写真はまさにそんな感じ。とはいっても、調べてみるとこうやって決済をする人は希なようです。というのもこのジンバブエドルというのはもはや全く信用されておらず、国内では外貨での支払いが主流になっているようなのでこういうシーンはあまりないみたいなのですよね。そもそも値下がりが確実な紙幣を誰も受け取りたくないだろうし*1


そういえば、例のやる夫シリーズでなかなか面白いものがありました。

やるおで学ぶハイパーインフレ

このハイパーインフレに陥っているのが今のジンバブエなわけですね(国債はあまり関係ないので、このケースとは違いますが)。

ちなみに歴史上では上の第二次世界大戦前のドイツでの100兆マルク札発行のほか、ハンガリーで1946年に10垓ペンゲー(数字にすると1,000,000,000,000,000,000,000ペンゲー)札が印刷されたりしてますね(発行までは至らず。ギネスブック入り)。今回のジンバブエもそうなる危険性は十分にはらんでいると言えるでしょう。


じゃあジンバブエは何でこうなったのか。これに関しては、『【国際】1ドル=2500万Zドル、100ドル=札束20キロ…ジンバブエ通貨の下落止まらず』でわかりやすいまとめレスがあったので引用させていただきます。

39 名前:名無しさん@八周年[] 投稿日:2008/03/10(月) 01:34:35 id:KD8iTUJM0
ジンバブエの簡単な解説

今までずっと少数派の白人が政治の実権を握っていたが、民主的な選挙で、黒人政治家が増える

とうとう初の黒人大統領が誕生

何を思ったか「植民地時代に強奪された白人の土地資産を黒人へと無償かつ強制的に権限を委譲しなさい」法案を提出

大半の白人が安値で土地資産を売り払って外国へ。

今度は外資系企業に対して「保有株式の過半数を譲渡するように、逆らったら逮捕」法案を提出

外資系企業が国外逃亡する

別に国連もアメリカも、どこの国も経済制裁してないのに、経済制裁と同じ状態に陥る

何もかもの物資が国内で不足するので、「市場に出回っている物資が不足するなら、物資を持つ物は絶対に市場に売らないといけない」法案を提出

物資の強制売却で、さらに物資不足が深刻化。当然需要と供給バランスが崩れて高値になる。

物資が高値に成り過ぎて買えない人が続出

「物資を絶対に安値で売らないといけない」法案を提出

調達コストよりも遥かに安値で売らないといけなくなったので、当然のごとく利益が出ないから国内企業が次々と倒産する

安定していた経済が、脅威の失業率 & ハイパーインフレ になるのを一年も経たずして達成。おめでとう。

失業者があらゆる物資を強奪し、社会不安が増大、交通機関や警察機関も機能しなくなる。政治も収拾がつかず無茶苦茶に。

コピペという性質上、それまでの経緯とかは端折ってありますが、筋としては間違ってはいないみたいです(まあそれでもコピペであるのでそのあたりは留意)。ちなみに過去のジンバブエは例の法案が通るまでは農業、鉱業、工業のバランスの取れた経済であり、農産品の輸出が総輸出額の半分を占めていたようです(まあたしかに人種間の不平等はあったでしょうね)。しかし、「植民地時代に強奪された白人の土地資産を黒人へと無償かつ強制的に権限を委譲しなさい」法案のあたりからどうも雲行きが怪しくなりはじめます。どうもここには人種間の深い対立もあるようで。しかし、海外に経営層が出て行ってしまうことでノウハウの喪失が起こります。別にこれは人種は関係なく、どこの国でもある一方の人に極端な政策をとるとあとでツケが来ますよね。日本で言えば鎌倉時代末期、幕府の徳政令によって御家人の借金を帳消しにすることになりましたが、その結果御家人に金を貸す商人自体がいなくなってしまったことで御家人はより困窮し、結局は徳政令はなかったことにされてしまうということがありました(ちなみに昨日紹介した「少年少女日本の歴史」にもそのあたりの様子がちゃんと描いてあります)。

おそらく、抜本的な改革を打ち出さない限りは、歴代のハイパーインフレがそうだったように、このままインフレは進行するでしょう。*2

インフレの状態で金を入手してあとで立ち直った時に売れば大もうけ、と考える人もいるかもしれませんが、それは自然に立ち直った時のみです。通常の場合は通貨の切り替えなどが行われ、適正なものにされてしまいます。その場合はたいていその国の経済価値に見合ったものになるので、結局プラスになる可能性はかなり低いでしょう。

ちなみに日本でも、そのくらいのハイパーインフレになる可能性がかなり高かった時期があります。それは戦後。戦争による働き手&資源の不足と不作による物資不足で価格の高騰が始まり、それが混乱とあいまってインフレを引き起こしていました)。まあいろいろな政策があり(そのへんは本当に複雑なので今日は割愛。「戦後 インフレ」で検索すればいくらでも出てきますのでそちらを参考にしてください)、最終的には1ドル=360円を主とするドッジ・ラインが実施され、なんとか収束しました。



気になるのは現在物価上昇が続く日本でジンバブエみたいになるか、ということです。おそらく早々にはないでしょう。現在の円がハイパーインフレを起こしたら、世界まで巻き添えを食い、世界経済が壊滅する危険性もかなりあるので、さすがに放っておかれるはずがないでしょうし。しかし経済というのはいつどうなるかがわからないものですので絶対なんてものはありません。ここは安心せずに十分に注目をしておくべきでしょう。

*1:しかし、それのためか今度はUS21$相当以上の通貨を所持すると違法法案が通過したらしいです。自国の通貨が力を失わないようにするため、つまりインフレ抑制策のつもりなのでしょうが、まあ……。

*2:よくコピペで「ヨハネスブルグのガイドライン」というのが出てきますが、あれもアフリカの中では経済的に発展している南アフリカにジンバブエからの貧困層が流入して、ヨハネスブルグ(つまり都市部)の治安の悪化を招いているという点もあるようです。それこそそこにいる人は失業者が多く、犯罪をしないと生きられないような状態なので止めようがないという感じみたいです。