日本史を学ぶ上での名著『学習まんが―少年少女日本の歴史』

ブログで紹介される本やマンガというのはかなりの数に上ります。そして手塚治虫のように多くの人に読まれている漫画はそれだけ書かれる機会も多くなります。最新刊となると尚更ですね。しかし読まれている数に対して紹介される機会の少ない(と私が思っている)作品というのも存在します。これはそんなもののひとつ。

 江戸幕府ひらく―江戸時代初期 (小学館版学習まんが―少年少女日本の歴史)
小学館版学習まんが―少年少女日本の歴史
(これは12巻「江戸幕府ひらく―江戸時代初期」)

この本、子供の頃にプレゼントしてもらった方や、学校の図書館で数少ないマンガとして見かけたことのある方もそれなりにいらっしゃるのではないでしょうか。ちなみに日本の歴史をマンガで描いているものは、集英社版や学研版、そして石ノ森章太郎の中央公論新社版など多数あるのですが、私が読んで育った&巻数が20数冊と適当なこれにさせてもらいます。

本の内容……日本の歴史全般。おお、これだけで内容の説明が終わったぞ。しかし、この短い言葉にもかなりの要素が詰められています。歴史ものマンガや小説の力が強いのは、それこそ戦国時代や幕末をモチーフにした名作がたくさんあるのですでにおわかりと思いますが、これもその歴史ものの強さを持ち合わせているのですよね。学習まんがと言っても全然ばかにできません。例えば菅原道真が流罪になるエピソードがあるのですが、道真の死去後、次々に襲いかかる呪い(藤原時平の死や飢饉)が描かれ、さらに最後、雷が落ちるというシーンまで、当時の人が恐怖している様子がきちんと描かれています。それこそ本当に道真がカミナリを落としたんじゃないかと思えるくらい。あと、泣かせのエピソードがわりとあるのですよね。奈良時代、苦難を乗り越えて来日した鑑真(このへんは井上靖の『天平の甍』みたいな感じ)、壇ノ浦、自分を犠牲にし、一揆の責任をとることで村を助けた江戸時代の農民、西南戦争で倒れた士族等、沖縄派遣前に幼なじみの女の子と最後の会話をすることになる兵士等。史実をもとにしているからさらに感動します。

しかもこれ、マンガだといっても、おそらく日本史を学ぶ上ではかなり上質な教科書でもあると思っています。まずはこれを読むことで、日本史の「流れ」が完全につかめることが理由としてあります。教科書的に出来事を時系列で羅列しているのではなく、ちゃんと原因と結果をマンガの上でふまえてストーリーにしているので、それらの一本線が読むだけで構築されるのですね。歴史というのはほとんどの場合、原因がある故の結果、そういった流れの連続だと思ってますので、これをちゃんとストーリーとして描いてある面はおみごとだと思います。しかも私の読んだ小学館版の場合*1、個々の出来事に関してもかなり詳細に採りあげているのですよね。それは欄外の解説はもちろんですが、それ以外でも明記はされないけど、あとでくわしく日本史を学んだ時に「ああ、こういうことだったのか」と思う部分が数多くあります。例えば藤原道長が「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」という有名な句を詠むシーンがあるのですが、そこではマンガでは隣にいる藤原実資が心の中で「なんとまああきれた」(この句があまりにも増長的だったので。あとあまり句としてもうまくはない)と思うけど、実際は「いえいえ、素晴らしい句に返歌が出来ません」と言うシーンがあるのですが、これ、『小右記』というのに実際に書かれている話なのですよね。ですが『小右記』自体、日本史ではマイナーな知識に入るでしょうものでしょう。少なくとも大学受験までは使いそうにありません。しかしこのマンガのこのエピソードを覚えていると、「ああ、こういうことだったのか」と後づけでわかり、そして『小右記』という知識自体もそれに付随するように覚えやすいのです。

これがもし、教科書だったらあまり頭に入らなかったかもしれません。しかし、マンガ故に頭に入りやすいのですよね。そういえば最近ネットでは、やる夫で学ぶシリーズってのが流行ってますよね。

やる夫まとめ翠星石のギャルゲーブログさん)

これみたいに、知らないものでも一度簡単でもわかりやすいものを頭に入れてしまえば土台が出来、次からはそこにいろいろ付随させていくのは最初とは比べものにならないくらい楽でしょう。そしてこれは日本史の学習でも同じだと思います(ちなみにやるおで学ぶ日本の歴史ってのもありますけど、ちょいと大まかすぎかも。面白いけど)。

そんなわけで、これはマンガとしてだけではなく、日本史の教科書としてもオススメできるものだと思います。何事もそうですが、「その学問に対して興味を持つ」というのが、一番学力を向上させる要因だと思います。自分が日本史を選択している学生、受験生である人はもちろんのこと、入社前などで一般常識をつけたい人、今まで日本史が弱いと思っていた人、そして純粋に楽しみたい人まで読んでみてはいかがでしょうか。別に縄文時代から順番に読む必要はないと思うので、それこそ興味を持った時代から*2

そういえば戦後史では、同名小説を劇画化したさいとうたかをの『劇画 小説吉田学校』という名著があるのですが、これはまたの機会に。

ちなみにAmazon貼ってはありますけど、それこそ前述のように図書館にもあると思うのでそっちで読むのも手かと思います。まあだいだい子供向け置き場なのではずかしいかもしれませんが(意外と隠れて人気みたいで)。

奈良の都―奈良時代 (小学館 版学習まんが―少年少女日本の歴史)

奈良の都―奈良時代 (小学館 版学習まんが―少年少女日本の歴史)

*1:他のはわからないけど、まあたぶん大丈夫か

*2:ちなみにあまり縄文以前史は中古での購入はおすすめしません。というのは本の古さによっては旧石器捏造事件がからんでくるために、記述がどうなっているかわからないのですよね