「アベする」が流行らなかった理由を言語面から考えてみる

新年になってから話題として出すのも何ですが、去年のネット流行語大賞は「アサヒる」だそうです。

ネット流行語大賞に「アサヒる」

この言葉、はてなキーワードにはこうあります。

朝日新聞社が『アベする』なる語句を創出し、明確な根拠なく「(若者の間で)この言葉が流行している」と捏造としか考えられない記事を書いてまで、自らの論調に相容れない安倍首相(当時)を執拗に攻撃したことから。

さて、この「アサヒる」が作られる原因となった「アベする」ですが、これ、流行語になる要素としてはかなり疑問符のつくところが多いのですよね。それは上で言われているような社会的な面ではなく、言語的な面で。おそらくこの時点で「最初から流行ってないし」とか「捏造にそんな要素があるわけではないだろ」と仰る方もいると思いますが、このブログの特徴通り、あえてそこは斜めから考えてみるということで、この言葉を言語的な面から流行語として何故成り立ちにくいのかを考えてみようと思います。

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独自性がない

この言葉、ただの「アベ」(固有名詞)+「する」(動詞)でよね。ただくっつけただけです。流行語というものにはは多少はその言葉面に面白さや独自の特徴があったりするものですが、これにはありません。実際、名前を変えただけの「オザワる」とかいろいろ出てきるようですし(流行はしていませんが)。これが同じ意味でももうちょっと独創的な表現だったらそれはそれで面白かったのですが、これでは芸がないにも程があります。首相を使った造語では「ブッチホン」なんてのがありましたが(これも流行語大賞になってから広まった感はありますが)、こちらにはわずかですが関連させたうまさを感じます。「アベする」を作った人はせめてこれくらいの工夫はしてほしかったところ。

ちなみに同じことは「アサヒる」にも言えるのですが、これは成立の経緯からそのまま皮肉返しと思われるのでこっちは仕方ないかと。

発音しにくい

これ、実際に読んでみれば分かりますが、なんとなく言いづらい気がしませんか? これ、おそらく4文字言い切り系だからだと思います。

日本語の歌詞は、多くが3、5、7の奇数の組み合わせになっているのはわりと有名だと思います(6の場合も多くは3+3ですし)。偶数の場合もありますが、音を詰める、「ん」(撥音)や伸ばしを使うなど、なるべく偶数の言い切りにならないものが多いと思われます。これは俳句や短歌もそうであるように、日本語が奇数の組み合わせで美しく読めるように出来ているからなのでしょうね。ですがこれは4文字で、且つ伸ばし棒も撥音もなく、いった感じなんとなく固いです。去年といえば「どんだけ〜」も見た目4文字ですが、一番後ろを伸ばすため、言いやすいようになっています。ですので「アベする」が流行語になるとは考えにくいのですよね(せめて伸ばしに近い「う」が入っていれば4文字でもまた違ったのでしょうが)。ちなみに仮に流行語としてこれが自然流通していたのでしたら、どこかで「アベる」になった気がします。

さて、これも「アサヒる」は同じ欠点を抱えています。ただ、こちらは前述のよう皮肉返しですし、さらに「アサる」でしたら「漁る」と混同しますし、「アヒる」だったらダック、かといってちょっと音を濁らせて「アビる」にしたら全く別の意味になってしまいます。

それ以外にも、「アサヒる」に関してはネットの流行語、つまり発音されることのない文字ベースの流行語なので、あまり言いやすさは関係ないような気もします。それ考えたら「アッー!」とか言えないし。でもそう考えると、ネットの流行語ってのはそう言った性質の違いもあるんだなという見方も出来て面白いです。

まとめ

そんなわけで、「アベする」は流行語としては言語的に不完全な面が多すぎるのです。まあ急造の言葉ならそれも(以下略)。

でも、考えてみるとこれらの流行語ってのは「雑誌やテレビでの」という言葉がつくのですよね。それは今まで雑誌やテレビ以外のメディアがなかったから。つまりそういったメディアにとりあげられてはじめて流行に成り得たから。ですので、その流行語が最近「本当に流行っているの?」と思ったときは、その見ている自分自身が既存のメディアへの感心が薄くなってきたということもあるのだと思います。

そのうち「流行語」の「流行」も終わるときが来るかもしれません。流行なんてものは、時代遅れの一歩目という宿命を背負っているのですから。

追記

あと肝心なのを忘れていました。それは「言葉がどういう意味なのかさっぱりわからない」ということ。まあこれは他の流行語でもそうですが、一度聞けばそういうものだと納得できます。でも、これの場合人によって印象が違いますしね。でも「アサヒる」がネット上で意外と広まっているのは……

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