「かわいい」という言葉はなかなか奥が深いという話

「面白い」という言葉があります。意味は今更言うまでもないでしょう(というか根本的な単語を説明しようとすると、逆に大変そう)。しかし、一口に「面白い」と言っても、それが現す感情表現が全部同じではありません。例えばギャグマンガを見たときの「面白い」と、事件の展開を見ている時の「面白い」、手品を見ているときの「面白い」、ケンカを見ている時の「面白い」では、言葉は同じでもニュアンスは違います。ちなみに英語では「面白い」を検索するとinteresting、entertaining、amusing、merry、pleasantなどが出てきますが、それに日本語では「面白い」という一語なのですよね(もちろん前後の文脈判断が加わるのが日本語の特徴とも言えますが)。

でも、日本語で「面白い」と単語のみで言うと、どっちかというと笑えるイメージ、英語で言えば「interesting」のイメージが強い気がするのです。ですので、怖いものとかサスペンス映画について、もしくは犯罪ものノンフィクションの本についての感想を書くとき、たとえそれが良い作品でも「面白い」という言葉を使うときになんとなく躊躇してしまうのですよね。ですが代わりの単語はかなかな見つからない(「興味深い」もちょっと違う気がするし)。で、結局ちょっと抵抗を感じつつ、「面白い」に落ち着いてしまうことがあります。


さて、わりと真面目な日本語論から関連するようで関連しない話。
「かわいい」という言葉があります。さて、これも一部の皮肉用法はありますが(「(サンタを信じているなんて)可愛いヤツ」みたいな用法など)、基本的にはプラスの言葉ですね。しかし、伊集院光が以前ラジオでこんなことを言っていました(多少違うかもしれないけど、主旨は同じ感じ)。それは「女性は男から見たらブサイクな芸人を『かわいい』と言うことがある。それはしずちゃん南海キャンディーズ)や、森三中、ハリセンボン等)。だけどその『かわいい』と言った女性に「そのタレントみたいにかわいいね」と言うと、不満そうな顔をするのはなんでだろう。おそらく女性のかわいいはそういったものもあるから、女性芸人はかわいいと言われて勘違いするな」というもの。たぶんしずちゃんがグラビアかなんかに出たあたりでの皮肉だったと思います。

聞いたとき、かなり深い話だと思ってしまいました。そして私が考えたのは「かわいい」という言葉は、上の「面白い」のように意味合いがひとつではないんじゃないかと思ったわけです。すなわち、自分がそうである時に言われてうれしい意味での、主観でも有効な「かわいい」と、他者である場合に対してのみ有効の客観的な「かわいい」。そして数で言えば、後者の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。

かわいいと言われるものは数多くあります。それは動物から人、ものまで。だけど、「パンダに似ていてかわいい」と言われて、嬉しい人は少数派でしょう(まあ文脈にもよりますが)。せめて、「美人」とされている芸能人に似ている程度が、自分で言われても嬉しい範囲内ではないでしょうか。あと、男性は女性より「かわいい」が褒め言葉になる範囲が狭いと思うので、また後者の割合が増えると思います。

昔、「かわいい」より「綺麗」のほうがいいみたいなCMが会ったような気がしましたが、上のことをふまえると納得かもしれません。「綺麗」の場合は、「かわいい」よりは自分が言ったのと同じ意味で言われた時も、嬉しい時が多そうなので。

でも、「面白い」にせよ「かわいい」にせよ、これらを言い分ける言葉があったら便利かもなあとは思ったりします。