空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

インターネット世界は『泣く子とサーバ持ちには勝てぬ』なのか

なんかニコニコ動画と初音ミクの問題が騒がしてくなっているみたいですが、なんか考え出すととんでもなく深いところまで思考がいってしまいます。とりあえず考えたことは直接関係あるもの、あまり関係ないもの含めていろいろあるのですが(それこそ著作権管理問題からトラブル時のネットでの対応、果ては日本の法概念と英米法の概念との違いまで)、しばらく様子を見てみてから、気が向いたら書こうと思います。本当は何事もなく、みんなが納得する解決をしてくれればありがたいのですけど……イノセンスな刻は帰らないのだろうか……


で、今回色々思ったことのひとつに、ネットサービスにおいては『泣く子とサーバ持ちには勝てぬ』なのかというものがあります。
この今回のニコニコ動画みたいな騒動がネットサービス上で起きると、掲示板などで移籍先の検討が始まることがあります(最近だと某銀行口座でしょうか)。そして、もし類似のサービスやそれよりいいものがあった場合、そちらに移動するでしょう。しかし、必ずしもそれがない場合があります。ひとつは、そのサービスに他には真似できない独自性がある場合。そしてもうひとつは、サーバ的に今抱えている人数を受け入れるキャパシティがない場合。

現在のインターネットでは、サーバが存在します。そしてそこを閲覧するためには、もしくは利用するためにはそれなりの容量が必要となります。しかし、それの利用人数が増える度に転送量や設備投資が増え、リアルマネーを使うことになります。しかし、現実でそれをだれもが負担できるはずは当然ありません。ましてや利用者が多い場合特に

昔からインターネットを使って大手テキストサイトやニュースサイトを見ていた方には「転送量問題」というのを眼にしたことがあると思います。つまり、個人で無料サービスのホームページなどで作っていたサイトが異常な注目を集めてアクセスが集中した時に、転送料の負担を理由にその運営元からその分の料金を払うか移転、もしくは閉鎖するかの選択を迫られてしまうというものです。さすがに現在ではあまり見なくなりましたけどね。

インターネットでは、現実的な財力がどうであれ(現実の制約を受けない限り)わりと平等です。大手企業の資金に比例してアクセス数が集まっているわけでもないですしね。ですが、結局のところサーバを利用して使うものである以上、サーバを持っているものには逆らえないのではないかと思ったわけです。
しかし、現実にはそのサーバがダメでも、他に移るというのがあります。これはネットサービスの場合でも同じで、他の似たサービスに移ればいいだけ。しかし、そのコンテンツの巨大さを受け入れるところが他にない場合はどうでしょうか。そのままの形を保つには、かなりの苦労をすることになると思います。

数年前、Yahoo!オークションが有料化をした時にも似たような議論があったのを思い出しました。つまり、Yahoo!オークションを抜けてどこかに移動しようという議論が生まれました。ただ、その当時からいくつかネットオークションはあったのですが(ぐるぐる、WANTEDオークションなど)、ちょっと増えただけで「重い」のですよね。というのは、当時かなりの人員を集めていたYahoo!オークションに対して、他のところはかなり小規模だったため、結局移動できるところがなかったのですよね*1
そういえば2chの閉鎖騒動なんてのもありましたが(別名「みんなはさーん」と夜勤さんが言った騒動)、あれも当時真剣に移籍先が検討されていましたけど、かなり難航していたように思います。結局CGI改良で乗り切りましたけど、あれがあのままだったらどうなんていたのでしょうね。


さて、これをニコニコ動画に当てはめてみますとどうでしょう。字幕.inというものがあるので、動画に字幕を入れるサービスを他で始めること自体はそれほど難しいものではないと思います。しかし、今のニコニコ動画にいる人員が仮に移行したとして、それを受け止めるだけのサーバーを持っている会社がどれくらいあるのでしょうか。もしくは、それだけの設備負担をするつもりのある会社がどれだけあるのでしょうか。おそらく、そんなにはないと思います。つまり、現在のところニコニコ動画は独占状態とも言えるのではないかと。それがどのような影響を及ぼしているのかは何を言っても希望的観測or邪推以外の何者にもならないと思いますが。

こういうことから考えて、そのサービスの意図する、しないにかかわらず、サーバーを持っているところがネット上の強者になってしまうのではないでしょうか。極論、ほかのサービスで似たようなことがあった場合、それを吸収してしまうことも出来るでしょうし。

現在のネット上の強者といえばGoogleがありますが、検索能力の他に、そのような無限大のサーバーを持っている点も、強みの一部ではないかと思えてしまいます(仮にgoogleより上の検索機能を持つシステムがあっても、それを採用できる会社はごくわずかでしょうし。というかそもそも現代の検索エンジンって金持ち会社しかできなさそうですよね)。


では、この「サーバ資本主義」みたいな現状は永遠に続くのでしょうか?となると、必ずしもそうではないと思います。というのは、サーバのスペックは日々増えているのですから。まあ、それにも限界があるかもしれませんが、技術がそれを解消する可能性もあるでしょう。例えばPSP動画サイトなんていうものも出来ないとはいえませんし*2。将来的には、家置きのサーバである程度の動画サイトが開けるくらいになっている可能性も無きにしもあらず。

ともあれ、ニコニコ動画はこのまま現状を取り持つのか、それとも何かが変わり、他のものが出てくるのかは注目に値すると思います。


※もうちょっと書きたかったけど、忙しいのでこのへんで止めておきます。すみません。

*1:まあ実はこれよりも有力な要因として、オークションの特性上、どんなに出品者が移動しても客が移動しないとどうしようもないので、直接的影響のなかった落札者側が動かなかったためにYahoo!に留まらざるを得なかったという事情もあるのですが。あとビッダーズもアダルト禁止、手数料取ると制約があったのもありますし。

*2:実はこのP2P技術の進化とDL全違法化反対はかなり近い関係にあると思いますが、それはまた今度