マンガのアニメ化は、必ずしも原作に幸福をもたらすわけではないという話

さて、「綺麗に終わり方を迎えられたマンガ10」においては、アニメ化した作品が多かったと思います。実は、これには理由があって、「アニメ化されたのに無事に原作を終えられた」という点を評価したためです。
これではなんだかアニメ化が悪いみたいに聞こえがちですね。本来、アニメ化されればそれだけ目立ちますし、少なくとも売り上げや注目度にしてみればそれをしなかった時よりも確実に上がるでしょう。掲載誌とかでもカラーになったり特集が組まれたりしますよね。となると、アニメ化は作品にとっては幸せで、誰もが歓迎するように思えます。
しかし、長い目で見ると、このアニメ化というのはもしかしたら必ずしもそのマンガ作品にとってプラスになるわけではなく、むしろマイナスになることもあり得るのではないか、と思ったのです。

こう書くと、まず「そのアニメの出来が悪かった場合」というのを思い浮かぶ方が多いでしょう。昔から言われている『ヤシガニ』や、最近で言うと『キャベツ』みたいなもの、つまりアニメの質が原作をどうこう言う以前に著しくレベルの低いものとなってしまい、人気が出ず(話題は出るかもしれませんが)、それが原作への人気に反映されないというパターンです。これによって「原作もこんなのかなあ」と思われることがあるかもしれません。まあ作画崩れならアニメ特有の現象ですが、もっとひどいのはアニメ独自の改変でとんでもないパターンにされてしまった時でしょうね。それが成功すればいいのですが、失敗したら「原作もこんなのかなあ」と思われる可能性がありますし。

しかし、そんなパターンのアニメ化よりも、その原作にとってマイナスになる要素がもうひとつ存在していると思います。しかもそれは、アニメの出来に関係なく。それは「アニメ化により、原作の勢いをなくす」ということ。
アニメ化というのは大イベントですので、前述のように雑誌その他でいろいろな露出が行われます。しかし、アニメが終了するとそれは収束します。まあ当然と言えば当然ですね。

これをグラフで表すと、今まで上昇していたその原作の勢いがアニメで急速に上昇し、それがアニメ終了後にだんだん下がってもとのところに戻ってゆく感じ。
しかし、このグラフがもし、そのアニメが始まる前より上に戻ってそこで下げ止まればまあいいでしょう。アニメで原作ファンを呼び込んだとも言えるわけですので。しかし、そうとはならない場合も存在するのではないでしょうか。すなわち、その下降の勢いがアニメの放映前の人気地点を過ぎても下がり止まらず、そのまま作品自体が終了してしまうということ。つまり、アニメ放映中に注目度を使い果たしてしまって、終了時にアニメファンをつなぎ止めておくことが出来なかったばかりか、原作のファン、もしくはアニメ化せずとも原作のファンに成り得たかもしれない人に、その作品をアニメ化終了後の「過去の作品」として認識させてしまうということです。つまり「アニメが終わった」ということを、その作品のピークが過ぎたと錯覚させてしまい、原作を読むことも古いと思わせ、結果人気が集まらなくなってしまうということですね。なんというか、下降線の勢いが止まらなくなるという感じ。

これは今に始まったことではなくて、かなり昔からあったように思えます。思い返してみると、アニメ化された作品で、その放映終了後あまり時を経ずに終わってしまった作品ってのはかなり多いように思えます。特に少年誌、少女誌あたりで。

前回紹介した『ハチミツとクローバー』や『美鳥の日々』みたいにアニメと同時に原作もちょうどいい感じで終わるもの、もしくは『フルーツバスケット』みたいにアニメ終了後も原作の人気が在り続けて、素晴らしい最終回を迎えられるのならOKでしょうが、現実はそううまくはいかない例もあるってことですね。ですので、綺麗にアニメ化されても綺麗に終わることの出来た作品は幸せではないかな思います。(というか、最近アニメと連載終了が開いていないパターンが多いけど、もしかしてこの現象を見越しているのか?)。
ま、ものによっては逆に「アニメ化する頃には時間がかなり経っていて、人気が下降線になっていた」と言えなくもないのですが。


これを避けるためには、アニメが終わった作品でも使い捨てのようにせずに、出版社がプッシュし続けること、そして読者もアニメ化が終わったからといってそれを過去の作品みたいに思わないという思考が重要ではないでしょうか。せっかくの名作になりえるものが潰れてしまうことがあるのはもったいないので。

ちなみにちょっと前までやっていなアニメでもそうなりそうなものがいくつかあるのですが、まだまだ読みたいし、そうなってほしくないなあと思い、ちょっと書いてみました。まだまだマンガにとってアニメ化は影響力の大きいものですが、原作あってのアニメだということを忘れてはならないと思います。