漫画雑誌における大いなるマンネリとそのジレンマ

気になったエントリーがありました。(情報元:傷痕症候群さん)

今一番「つまらない」4コマ誌は『まんがタウン』であるよつぎりポテトさん)

タイトルだけでは単純につまらない漫画雑誌を取りあげているだけのように見えますが、そんなことはなく、実際は「変化がない」という意味から持たれた感想が書かれています。

しかし、ここで思ったのは、この『まんがタウン』が意図的、雑誌販売戦略的に変化をしていないんじゃないか、ということです。

思うに漫画雑誌にはそれの読者に「変化が望まれる雑誌」と「変化が望まれない雑誌」というのに分かれると思うのですよ。そして何故、後者は変化が望まれないのか。それは、『大いなるマンネリ』というものだと思います。

この『大いなるマンネリ』というのは、つまりは時代劇のように変化することではなく、安心して見られることのほうが視聴者にとって重要、という作品を指します。それは例えば『水戸黄門』のように、OP→善良な民が虐げられているところに遭遇→悪代官内偵→チャンバラ→印籠→「へへーっ!」→めでたしめでたし、みたいにだいたいの流れが決まってしまっているもの。
余談ですが、『水戸黄門』でご老公がほとんどピンチにならない、そして8時40分台で印籠を出すのは、そうしないと苦情が殺到するからという話を聞いたことがあります。(あと「ご老公が死にそうになると、TVの前の老人もショックで死にそうになるから」という都市伝説みたいな話もありますが)
つまり、『水戸黄門』の視聴者には、そういった変化ではなくて、ストーリー展開は分かっているけど、力を抜いて安心して見られるものが望まれているわけですね。そう言えば石坂浩二水戸黄門をやった時に、それまでの水戸黄門からだいぶ離れた展開になりましたが(弥七、八兵衛がいなくなる等)、その後の里見浩太朗水戸黄門では、だいたい昔と同じ感じに戻ってましたし。

そして時代劇に限らず、アニメとかでも同じことが言えますね。例えば『ドラえもん』や『サザエさん』『クレヨンしんちゃん』『ちびまる子ちゃん』。これも大きな変化はありませんね。
ちなみに『ドラえもん』は、最近の変化に否定的な声をよく聴きますが、これも『大いなるマンネリ』を良い方にならともかく、悪い方向で崩していること(例えば芸能人とのタイアップ)が反発を招いている気がします。

ただ、もちろんこういう作品だけではなく、変化がなければ飽きられて消えてしまう作品の方がはるかに多いでしょう。


さて、漫画雑誌の話に戻りますと、やはりこれにも変化が常に必要な雑誌と、『大いなるマンネリ』による変化を望まない雑誌の2種類があると思うのですね。前者は少年誌、ヤング誌といったもの、そして後者は『ビックコミック』のような大御所が長期連載をしているような雑誌。すなわち漫画自体も大きな変化を望まないものが集まっている雑誌ですね。そういったところではいきなり『ビックコミック』巻末の『赤兵衛』(黒鉄ヒロシ)のスペースが萌え漫画に変わったり、あぶさんアストロ球団ばりになった漫画が始まっても、せっかく確保している既存読者が離れてしまうでしょう。

そしてその傾向は4コマ雑誌、すなわり『まんがタイム』やら『まんがハウス』のような雑誌にもあると思います。
かつての4コマ誌は、全般的に植田まさし堀田かつひこ系の漫画が主流でした。というかほとんどそれしかなかったと言ってもいいくらいです。まあ例外的に『小さな恋のものがたり』風のが載ってたりしましたけど。それが近年になって『まんがタイムきらら』『まんがタイムキャラット』のような、そういったところから変化をした雑誌が出てきているわけですね。しかし、そうは言っても『まんがタイム』本誌のほうは植田まさし松田まさお系が中心で、(兄弟誌に比べると)変化が少ないです。
これは、おそらく『まんがタイム』シリーズ内で「変化で勝負に出る雑誌(読者新規獲得目標)」(きらら系)と、「大いなるマンネリで、読者数の上下振り幅を抑える雑誌(読者保守型)」の2つの傾向を持たせているのではないでしょうか。
そして「まんがタウン」の場合、それを後者1本にしていると。まあたしかに『クレヨンしんちゃん』がある限り、安定層が多そうですからね。(ちなみに先月号の先生自殺未遂騒ぎは、『クレヨンしんちゃん』だからあそこまで騒ぎになったのかも)
そんなわけで、『まんがタウン』はこのまま変わることなく「大いなるマンネリ」を続けてゆき、新しいことをやる場合は新雑誌を創刊するような気がします。


しかし、長期にわたる雑誌や作品はそれもこの『大いなるマンネリ』のジレンマをかかえているのではないでしょうか。それはこの『大いなるマンネリ』は、他の作品より「安定」という意味で落ち幅は少ないですけど、それでも新規層が獲得しにくい分、確実に少しずつ人気は落ちてゆきます。しかしだからといって下手に変化をつけると、新規獲得が保証されていないのにもかかわらず、その安定層までも手放してしまう可能性があると。

現在のところ兄弟誌がなく棲み分けが出来ない『まんがタウン』。さらにビックコミックほど歴史があるわけでもないしライバルも多い『まんがタウン』(実は『ビックコミック』と対立する雑誌は兄弟誌を除けばそんなになさそう)もしかしたらそのジレンマに悩み抜いた末の路線なのかもしれません。

To be or not to be. It's a problem. (シェイクスピア-『ハムレット』より)