『ビックコミックスピリッツ』の栄枯盛衰

 『月刊少年ジャンプ』が休刊になるそうです。

 ■月刊少年ジャンプ休刊…創刊37年も出版不況に勝てず (リンク切れ)

 私はあまり読んだことはなく……というか同世代の人間では「親が週刊少年ジャンプと間違えて買ってくる本」というネタ記号化までされていましたが、それでも「キャプテン」をはじめとして名作を生み出したことは高く評価してよいでしょう。

出版不況と少年誌

 しかしどうやら売れていないのはこれだけではないようです。以下のものをご覧ください

 ■主要少年誌発行部数

 これを見て、かなりびっくりしました。どこも大幅に減っているのですね。(コロコロだけはポケモンパワーかやや安定してますが)

 思い出してみれば私の子供の頃は、それこそ週刊少年ジャンプは600万部越えの黄金期でした。ま、当時からへそまがりだった自分はジャンプを買わずにサンデーを買ってましたが、それでも3大誌は学校で借りたり立ち読みしたりで欠かさず読んでました。(まあサンデーを持っていたのが自分だけだったので、交換がしやすかったのもありますが)
 というか、今考えると『JoJo』の第3部、『ドラゴンボール』、『スラムダンク』がいっぺんにやっていたなんてほんと奇跡的ですよね。

 しかし、そんな隆盛もそれらの終了から陰りが見え始め、数年後にはとうとうマガジンに抜かれてしまいます。その辺の経緯や理由などは『さらば、わが青春の『少年ジャンプ』』や『消えたマンガ家』が参考になります。
 しかし数年後にはグラフの通り、全体的に下がりながらまた逆転しています。

90年代前半をリードしていた『ビッグコミックスピリッツ』その栄枯盛衰

 じゃあ少年誌以外はどうなっているのかと調べてみました。

 ■JMPAマガジンデータ
  http://www.j-magazine.or.jp/data_001/man_6.html#001

 ここで一番驚かされたのは、この部数データ。

ビッグコミック 小学館 580,750
ビッグコミックオリジナル 小学館 905,500
ビッグコミックスピリッツ 小学館 394,042
ビッグコミックスペリオール 小学館 318,959

モーニング 講談社 437,232
ヤングマガジン 講談社 998,198
(全部印刷証明部数)

 
 なんと、他社ライバル誌や兄弟誌のオリジナルどころかビッグコミックにまで大幅に抜かれているのです。昔は存在価値の一番薄かったスペリオールにまで届きそう……


 私の中学〜高校生時代、『ビックコミックスピリッツ』といえば、青年誌の中ではあまり目立たなかった『ヤングジャンプ』の代わりにヤング誌の代表として『ヤングマガジン』『ヤングジャンプ』と競争し合うほどの売り上げを誇っていたと記憶しています。当然兄弟誌の中でもトップでした。
 ちなみにその頃は、柴門ふみの『東京ラブストーリー』『同級生』『あすなろ白書』が月9でドラマ化されてかなりの高視聴率を収め、『伝染るんです』が社会現象となり、『YAWARA!』がアニメ化され、『美味しんぼ』はまだ栗田さんが雄山を弄ぶ前でした。『いまどきのこども』『F』なんかもあり、こちらも全盛期の少年ジャンプのようにすごいラインナップでした。
 個人的には必ずトリ前に連載が載っていた楳図かずお作品(『わたしは真悟』『神の左手悪魔の右手』『14歳』)が、今思うと一番すごかったと思いますが。

 これは『サルでも描けるマンガ教室』にも出てきた、当時の編集長白井勝也氏の功績が大きいと思います。


 しかし、残念ながら『14歳』終了時あたりからなんとなく読まなくなってきました。別に『14歳』終了がきっかけではなく、全体的に飽きてしまい「まあ立ち読みでもいいか」レベルになったからだと思います。

 でも単行本では浦沢直樹作品は読んでいましたし、松本大洋作品や『最終兵器彼女』などもありましたので、まあそれなりに売れてるんじゃないかなとは思っていたのですがここまでとは……

 これは、いろいろ原因が考えられます。
 ただ、私が調べていて気になったところではこんなこともあったそうです。

 ■楳図かずお - Wikipesdia
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A

『14歳』連載時、新任編集者に、ゲンコツを描いた紙を持ってこられ「手はこう描くんですよ」と言われた、という事件である。1971年『おろち』執筆以降、小学館の諸雑誌を主たる発表の場としてきた楳図にとって、こうした扱いは屈辱的なものであったと想像できる。

 まあソースがWikipediaなんで信憑性は低いですが(でもどうやら初出は新潮らしい)、もし本当ならこれはひどすぎる話です。

 たしかに売れ筋は柴門ふみ的恋愛マンガでしたが、それでも長い間スピリッツを、そして小学館を支えていた巨匠に言う言葉ではありませんね。ましてや担当編集者が。


 最盛期の編集長、白井氏(昔からの楳図担当で、雑誌に引っ張ってきた人でもある)は

 テレビが視聴率第一主義によって、その混迷を深めたように、コミックも、アンケート優先による、人気という得体の知れない怪物にふりまわされてはいないか?
 だがスピリッツは、そんなことには、一切頓着しない、一癖も二癖もある作家達が、読後に何かひっかかりを残すコミックを持ち寄ってくれた。明日への夢へ、ばらまかれたこの種子が、大きな木に育つことだけを願っている。(S)

引用:半魚文庫-『わたしは真悟』初出書誌
 http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/hobby/shingo/shi_big.htm#shi_bcs

と、ジャンプを否定する方向で書いていたのに。

 たしかに当時の売れ筋は柴門ふみなどの恋愛系でしたが、それで10年後(今)もなお評価され続ける名作を作り出した可能性逃してしまうとは、(ホントなら)その編集者の罪は重いと感じてしまいます。(ちなみに当時、白井氏がスピリッツを離れていたのかどうかは不明)

これからどうなるか

 今のラインナップも個人的には個性的な面々は揃っていて、単行本ではいくつか買っているものの、雑誌を買うまでには至ってません。

 さて、これから子供の頃栄光だったスピリッツは月刊少年ジャンプと同じ途を辿るのでしょうか。それともまた当時のような盛り上がりが見られるのでしょうか?


さらば、わが青春の『少年ジャンプ』 (幻冬舎文庫)

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消えたマンガ家―アッパー系の巻 (新潮OH!文庫)

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