「キモイ」という言葉における日本語の変遷

 最近、居酒屋で友人達と飲んでいたら、ある一人がこう言いました。

 「最近はよく(ナンパしようとすると)『キモイからヤ』って言われて避けられるんだよな。でもさ、昔って『キモイ』って意味でそんな楽に他人に言える言葉ってなかったじゃん。でもこの言葉出言われるようになってから傷つくよなあ」


 まあ、酒飲みながらの愚痴なのですが、この言葉にはみんながたしかに頷いていました。というのもたしかに私が子供の頃は『キモイ』に該当する言葉って無かったと思うのですよ。まあ、『キモイ』自体が『気持ち悪い』の派生語なので、後者のそれがそうじゃないかと思われるかもしれません。しかし、『キモイ』と『気持ち悪い』っていう2つの言葉を並べたとき、同じものとは言えないと思います。

 たしか『キモイ』って言葉が使われだしたのは1990年代後半くらいだと思いますが、それ以前でも昔から人に対して『気持ち悪い』とか『不気味』とか言うことはあったでしょう。しかしそれは洒落にならないほどの嫌悪感を持っていないと言えないほど重いものです。少なくともそれを正面切って言うときにはよほどの覚悟がないと言えなかったでしょう。
 しかし『キモイ』って言葉は、例えその当事者が正面にいても、冗談の範疇とか、酒飲んでナンパ時とかの対応なら言えてしまうというケースが多いのではないでしょうか(もちろん、状況次第では大いに問題がありますが)


 さて、これってやっぱり日本人の『優しさ』がなくなってきてる……とか、どっかの教授が言いそうなことを書いてしまいそうですが、そうなんでしょうかねえ。

 だけど、『キモイ』って言葉は今では一種の記号として扱われており、それほど気持ち悪くない人でも『キモイ』って言うケースもあるように思えます。例えば友人に向かって「お前キモイって」と言っても、本気でマイナス感情を持っていない場合は多々あると思います。
 なんか『オタク』という言葉が生まれたときの使われ方(イコール性犯罪者くらいに扱われた)と、今の使われ方(必ずしもオタクが悪いものではない。場合によってはいいくらい)に通じるものがあるような。


 もしかしたら、酒をのんでそう言われた友人の場合も、相手にとっては悪気はなかったかもしれませんが、言葉ってもの自体状況によって大きく印象が違うので、やっぱり使い方には注意するべきでしょうね。
 ま、酒の席ならいいですが、取り返しのつかなくなる状況もあると思うので。